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9条の論争 本論

前の記事で労働契約法9条に関して、10条との比較で9条の「労働者の同意」さえとれば労働条件は変更できると書きました。そして過去の判例法理から言って、その「同意」は簡単なものであっていいはずがない、とも書きました。
事実、過去の判例や労働契約法施行後の判例をみても、

その「同意」は、
その労働者の「自由な意思」に基づいた「同意」でなければならず、
「自由な意思」であることが認められるに足りる「合理的」な理由があることが客観的に存在する、

という観点から見なければならない、とされています。

ここで10条と同じく「合理的」が出てきました。
ただ、法学者の間ではここでホットな論争が巻き起こりました。
一つは、「合意基準説」
もう一つは「合理性基準説」です。

合意基準説は、「変更の内容の合理性」は絶対要件ではなく「同意の有無を慎重に判断する」ことで労働者の保護はなされるため「合意」を根拠に拘束力が発生するという説です。
要は「これほど『合理性』のない変更に労働者が同意するのか?」という意見です。
一方で、
合理性基準説は、たとえ労働者が変更内容に同意していたとしても、その変更自体に「合理性」がない場合はその変更そのものが無効となる。
という意見です。
最終的にはどちらも「簡単に労働条件は不利益変更できない」ということを言っているのですが、9条の根拠に何を持ってくるか、ということです。

で、判例はというと、どうも合意性基準説に傾いているようです。事実、協愛事件(大阪高裁平成22年3月18日判決)を見ると、明確に9条の反対解釈を認めており、同意によって就業規則変更が可能になる、と判じています。ただ、その「合意」は「労働者の自由意志」で結ばれた合意であることが客観的に合理性がある必要がある、と述べています。
これは合意基準説といってもいいかと思います。

さぁ、おさまらないのは合理性基準説派です。
この判例に対しては、判決も最終的には「合理性」の必要性を認めているではないか、だったらややこしいこと言わずに初めから変更そのものに合理性を求める方が10条との整合性も取れるしいいではないか、という論陣をはっています。
その後も両派の論争は続いていたのですが、いよいよ両派とも注目する最高裁の判決が出されました。
それが「山梨県民信用組合事件(最判平成28.2.19)」です。
この事件は信用組合の合併に絡む退職金規定の変更の問題なのですが、当事者や事件の変遷がけっこう複雑でわかりにくい事件です。
ただ、さすが最高裁ですね、ややこしい事件をちゃんと筋立て解きほぐした判決になっています。最新の判決ですし参考になる部分も多いので興味ある方はぜひ判決文を読んでみてください。
(余談ですが、判決文を読むと原審に対するかなりきつい表現が見られます。裁判所の判事も大変なんだなぁと感じさせられます)

で、結論から言うと最高裁も現時点では合意基準説に立っているようです。実際、司法の立場から言えば条文の文言というのは判断の基礎の基礎であり、最終的に同じ結論に達するのであれば、10条と違って「合理性」という文言を含んでいない9条の文言を尊重するという意味からも文言通りの解釈をするのではないかと思われます。

ところで、先ほど「現時点」と書きましたが、なぜ確定ではないかというと、この判決が「原審判決破棄差戻し」であるため、高裁で再度審議しなおしたうえで再び最高裁に上がってくる可能性があるからです。
まだ9条の論争は続きそうです。

9条の論争

いきなりへんなタイトルですが、9条といっても今巷で話題の憲法9条ではありません。
労働契約法第9条の話です。

労働契約法
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。



この9条と10条はいわゆる就業規則変更による労働条件の不利益変更を扱った条文なのですが、これがけっこう奥が深いです。
なぜかというと話は少々長くなるのですが、もともと労働契約法は過去の判例法理を条文化したものではあるのですが、法律の条文というのは短く書かなければいけませんので、判例をそのまま条文にするわけにはいきません。そのため、どうしても舌足らずな表現をせざるをえなくなっている条文が多いです。
この9条、10条も同様に過去の判例が基準になっているのですが、なかなか微妙な判断ができるようです。
まず10条をみると、これはあまり問題ないようです。10条が言いたいことは、

就業規則の不利益変更するためには、
①労働者へ周知する
②変更の内容が合理性を有する

の条件がそろえば変更していいよ、ということです。
しかし、①はそんなに難しくありませんが、問題は②です。
会社は変更の内容が「合理性」を有する、ということの説明ができなければいけない、ということで、逆に言うと「合理性」を説明できない限り労働条件の不利益変更はできない、という事です。
これはかなり厳しいです。これこそ過去の判例を見る限りかなりハードルが高くなってしまいそうです。
というのも、この「合理性」を説明するためには、

以下の判断要素をもとに総合的に判断する。
1.労働者が被る不利益の程度
2.変更の必要性の内容・程度
3.就業規則の変更内容自体の相当性
4.代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
5.労働組合等との交渉の経緯
6.他の労働組合または他の従業員の対応
7.同種事項に関する我が国の社会における一般的状況

と判示されています(秋北バス事件 最高裁昭和43年12月25日大法廷判決)。
これらの条件は手続き的な面もありますが、会社としてはかなりの負担になります。こういった負担を負わせることで安易な労働条件の変更に足かせをはめているという事です。
簡単にまとめると、変更の必要性とそれによって受ける労働者の不利益のつり合いが重要であるということです。

天秤

一方9条に目を向けてみると・・
「労働者と合意することなく変更できない」とあります。ということは「労働者と合意すれば労働条件は変更できる」と読み替えられます。
すると、10条のややこしい「合理性」云々で議論するよりは、さっさと労働者と「同意」さえとってしまえば就業規則は改訂できるではないか。という理屈が成り立ちます。
事実、こういった反対解釈の問題は弁護士の中から起こってきていて、比較的簡単に労働条件を変更できる、という一種の裏技ではないかという議論が起こりました。
もちろん。過去の法理から言ってその「同意」も簡単に取れるわけではない、というのは理解できますが、少なくとも条文を見る限り、労働者の同意を取ればすむ、という解釈がなりたってしまいます。
当然これに関してもいくつか判例が出てきているのですが、ここでやっとタイトルの「9条の論争」が出てくるわけです。
やっと本論に入ったわけですが、前触れがながくなってしまったので本論は次の記事に回したいと思います。

続く

リストラされ度チェック 判定編

前回のリストラされ度チェックはいかがでしたか?
不謹慎だというご意見もあるかもしれませんが、あくまでもブラックジョークということで。
ただ、そうは言っても自分がリストラされないように自分自身を強くする、自分の価値を上げる、ということは大切なことだと思います。
それでは、前回のご自身の数値を思い出して確認してみてください。

80~100
あなたは間違いなくリストラリストの上位者もしくは常連者です。
いつお声がかかっても不思議ではないので常に心の準備をしておきましょう。今更何をしても無駄かと思いますので、会社がリストラを実行しないことを祈るか、会社のトップになんとしてでも取り入る努力をしましょう。トップとの顔つなぎはかなり難しいですが、ゴルフ場やスポーツクラブで偶然を装って近づけば何とかなるかもしれません。顔なじみになってしまえばトップも人の子ですので最終リストから外してくれる可能性は高いです。

60~79
あなたはリストラリストの上位に位置付けられているか、上司からいつかクビにしてやる、と思われている可能性が高いです。
もう手遅れかもしれませんが、上司へのごますりを強化すれば何とかなるかもしれません。ただ、あからさまな態度変化はかえって反感をまねきますので、その点うまくやることが必要です。上司の弱みを握ることも一手かもしれません。

35~59
あなたはリストラリストの中位から下にいると思われます。自分の行いを振り返り、自分が回りに嫌われていないか再度チェックしましょう。
まだまだリストラ回避の可能性は十分にあります。希望をもって仕事に励み、回りにもちゃんと愛想よくしましょう。人の仕事を積極的に手伝うのも一手です。ただ、それで逆に嫌われる可能性もありますので注意しましょう。

27~34
あなたはリストラリストには載っていない可能性が高いです。現状でも何とかなっているので特に動く必要はないかと思います。
ただ、リストの数値は放っておくとすぐに上がってしまいますので、常に研鑽は必要です。自己の成果だけでなく、回りの成果にも貢献できるよう努力しましょう。

20~26
あなたはおそらく本音を言わない大ウソつきか、どうしようもなくいい人のどちらかなのだろうと推測できます。
あなたのような人を会社は求めていません。すぐにご自分から会社を去るべきかと思われます。
新しい天地に新たな夢をはぐくみましょう。幸運を祈ります。


いかがでしたか?
まぁあくまでもブラックジョークですので、あまり真剣にとらえる必要もないかと思いますし、この結果で落ち込む必要もありませんが、スコアにかかわらず自分を高める努力は人生を豊かにしてくれますのでぜひ頑張ってください・・・


と、いいつつ下記の本もおすすめです。
「反応しない」って究極のストレス回避なんです。


リストラされ度チェック

先日とある会合でリストラに関するレクチャを行いました。
なかなかセンシブルな内容でしたので当初予定していたよりも資料も膨らみ時間も目いっぱい使うことになってしまいました。
時間管理は難しいものです。

で、その席で講習に来てくれた人へのちょっとしたお土産替わりに、
「超簡易版リストラされ度チェック」
なるものを配布しました。
このチェックリストの問題に答えていくと自分のリストラされ度合いがわかる、というものなのです。
もともとは私が人事の仕事をしていたときに、リストラされる人ってどんな人?という単純な疑問から調べた、リストラ対象者共通事項のリストが元になっています。
これは自分の体験やほかの人事担当者や弁護士などからそれとなく、聞き取っていた内容をリスト化したものなのですが、当初は140項目にもなってしまっていました、それを自分なりにさらに絞り込んで50項目までに絞り込みました。
結局それも特に日の目を見ることなくほおっておいたのですが、今回とは別の会合で「リストラされやすい人」というお題で1時間程度の講話を行い、その時にこの資料を活用しました。
で、今回それをさらに絞り込んで20項目の簡易版として来場者に配布したものです。
どちらかというとブラックジョークの意味合いが強いのですが、ここでその20項目の質問を公開しますので、ぜひ皆さん回答してみてください。
項目に関してはいくつかのバージョンを用意していますが、今回は比較的オーソドックスなものを公開します。
なお、以下はすべてネガティブマインドでの質問となっています。ご自分ではそんなこと絶対ない、と思われるかもしれませんが、ここでの質問は多かれ少なかれほとんどの人が心の奥で考えているはずのことですので、自分の本音・本心で考えてレベル付けして考えてみてください。
1から5までの5段階で自分で点数をつけてください。0や6以上の数字は入れないでください。数字が大きいほどその度合いが強くなるということです。
すべて回答後にその点数の合計を出してください。その合計点数を別表の度数表で確認してもらうことになるのですが、その度数表は別途公開します。

なお、ネガティブクエスチョンの連続ですので回答を続けていくうちにだんだん不快になるやもしれません、気分が悪くなったりした場合は回答を中止してください。
ちなみに、この質問に回答して不快になられても、腹を立てられても、ご気分を損ねても、わたくしは一切関知いたしませんのでそのおつもりで。

では、よろしければご回答ください。

1 わたしは自分の出た学校はいわゆる有名校だと思っている
2 わたしは自分の仕事がまったく自分にあってないように感じている
3 わたしは自分の仕事を何とか効率よくできないかとよく考えているがなかなかうまくいかない
4 わたしは同僚や上司から「何度同じこと言わせる」といったことをよく言われる
5 わたしは5年以上(or 入社以来ずっと)同じ仕事をしている
6 わたしは回りの人の自分に対する目が気になっている
7 わたしは朝が弱く遅刻をすることもあるし、遅刻しなくても時間ぎりぎりの出勤が多い
8 わたしは自分の回りの人達はレベルが低いのでちゃんと指導してあげないといけないと思っている
9 わたしは会社で「知りません」「わかりません」「きいてません」をよく使っている
10 わたしは自分はちゃんと給料分の仕事をしているのだから問題ないと考えている
11 わたしは自分が今やっている仕事は自分がやるような仕事ではないと感じている
12 わたしは会社で自分から挨拶をしないし、挨拶されても無視するか顔を見ることなく小さい声で返事する
13 わたしは何か考えだすと夜ねむれなくなる、夜中に突然目をさますことがある
14 わたしは自分の上司や同僚になかなか本音で話ができない
15 わたしは仕事の期限を守れなかったり約束を忘れることがよくある
16 わたしは人と話すのは苦手で仕事のあとの飲み会も苦手です
17 わたしは自分が明るくて適応性が高いと思っている
18 わたしは周りからよく「この仕事お前に向いてないんじゃない?」という意味のことを言われる
19 わたしは顧客からささいなミスでクレームを受けることがよくある
20 わたしは仕事が遅いとか雑いとかよく言われる

いかがでしたか?
直ぐに結果が見られないのは申し訳ないですが、度数が高いほどリストラされやすい、ってことは単純にお分かりかと思います。
それではご回答ありがとうございました。



PDCAサイクルの話

しばらくブログ更新さぼってました
やっと梅雨が明けたのですが、私は1年でこの時期が一番苦手です。
ちょっと動いただけで汗が噴き出して、頭が乾く暇がありません。
暑いのはどちらかと言えば好きなのですが、とにかく湿度に弱く、気温が低くても湿度が高いと、それだけでぐったりしてしまいます。
そうは言ってもぐったりとしているだけというわけにも行きませんので、それなりに活動はしています。
(^^ゞ

先日ある集まりで講師をしたのが「PDCAサイクルで生産性向上?」です。
私は前職で社員の生産性向上に関してちょっと自分なりに研究したことがあって、生産性や品質に関しては一家言持っています。
そのネタの一つがこれ「PDCA」です。

最近「PDCA」に関して眼にする機会が増えたような気がします。
あまり知られていないようですが、PDCAというのは実は日本で確立された品質管理手法です。
元々は第二次世界大戦を期にウォルター・シューハート、エドワーズ・デミングらが提唱した品質管理の概念でしたが、それを日本の製造業が日本独自のカスタマイジングを行ってPDCAサイクルとして確立させたものです。
このPDCAサイクルによる品質管理手法は日本人の几帳面さとマッチして、それまで「安かろう、悪かろう」であった日本製品を劇的に進化させました。
そして日本製品が世界を席巻する立役者になったといっても過言ではないかと思います。

PDCA2.png


「PDCA」は一般的には「PLAN(計画)」「DO(実行)」「CHECK(評価)」「ACT(措置)」(「ACT」を「ACTION」としている例も多いですが、全て動詞で統一すべきですので「ACT」が適切です)を下記のようなサイクルで回していきます。
もちろんただ、サイクルを回すのではなく、「ACT」から「PLAN」へ戻るときにレベルを上げてスパイラルアップすることを目指す必要があります。

今、この「PDCA」が注目をあびつつある、と書きましたがもともと製造部門の品質向上手法であるPDCAサイクルを営業部門や事務管理部門などの他部門にも導入される例がここ10年ほどでかなり盛んになってきています。
組織レベルだけでなく、個人レベルでも取り入れようとする動きが広まっています。
しかし、実際に導入はしたものの、うまく機能しているという例はあまり聞いたことがありません。
少なくとも第一サイクルか第二サイクル辺りは動いていてもそれで行きづまってしまう、というのが多いようです。
行きづまっているのに無理やりサイクルを回そうとして余計に焦げ付いてしまう、もしくはPDCAを回すことが「仕事」になってしまって本末転倒の様相を呈してしまっています。
こうなってしまっては品質向上どころか、それに携わっている人が燃え尽きてしまいつぶれていってしまいます。
今回は、なんでこうなるのか、を自分なりに検証した講義を行いました。

下図は私なりに考えたPDCAサイクルです。
この図をベースにさらに企業や組織の目標とシンクロさせていくことで生産性の向上を目指すものです。

PDCA3.png


一般的なサイクルと少し違ってるところがミソなんですね。

それにしても暑いですねぇ。
これからが夏本番です。
皆様方も体調に気を付けてお過ごしくださいませ。

退職金の不支給・減額問題に関して

日本では退職時に一時金として退職金を支払う慣行があります。
終身雇用制度の中で長期雇用を確保するための一つの仕組みとして取り入れられてきたものですが、長い間一つの会社で勤め上げてやっとお役御免になったらあとは退職金が楽しみ(というかあてにしてる)という人も多いはず。
そんな大切な退職金が支給されなかったり、減額されたりしたらこれは大変です。
しかし、多くの会社では就業規則などで、退職金の不支給・減額が規定されています。
そして、そのほとんどが競業企業忌避規定か懲戒免職時の退職金不支給・減額規定です。
(以前は懲戒免職=退職金消滅というのが多かったですが、最近では判例を意識してか、「不支給または減額することがある」といった表記になっていることが多いようです。)

退職金というのは、「賃金の後払い的性格」と「功労報奨的性格」を併せ持つとされており、これらの性格から不支給とするのはよほどのことがない限りできない、というのが判例でも学説でも一般的です。

判例を見てみると、
中部日本広告社事件(名古屋高裁平2.8.31)では労働の対償たる性格を持つ退職金を失わせることが相当であるような顕著な背信性のある場合に限る、としていますし、小田急電鉄事件(東京高裁平15.12.11)でも退職金の賃金後払い的性格を考慮し、労働者の過去の功労を抹消してしまう程の背信性があった場合に限られる、としています。
これらからみるに「不支給」はよほどことがない限り不可能で、「減額」もいろいろな状況を客観的に総合的に見ながら検討しなければいけないことになります。
(小田急電鉄事件では従業員が他の電鉄会社の路線で痴漢行為を重ねていたことは「不支給」要件までには該当せず、3割の支給を認めていますが、痴漢撲滅キャンペーンをやってる最中に、その当事者が痴漢することが本当に「該当」しないのかすごく疑問ですし、これが女性の判事だったら違う判断をしたのではないかと思います。)

まぁ、退職金に関してはほかにもいくつか検討すべきことがあるのですが、あまり表にでないというか、問題にされないことで私がずっと不思議に思っていたことがあります。
それは退職金支給に関して、これも多くの会社で入社2年とか3年たたないと退職金を受け取れないとする、勤続期間による退職金未払い規定です(会社によっては6か月とかもあったりますが、中退共とのからみでしょう)。
退職金が給与の後払い的性格を持っているのであれば、とうぜん2年や3年の期間の中でも積み上げがあるはずです。功労報奨的な部分としても2年はともかく3年もたてばそれなりに功労もあるはずです。それを無視するのもどうなのかなぁ・・・なんて思ったりします。
このあたりももう少し法律的にクリアにしておくべきではないかと思いますが、ほとんどの人がそんなものか、という感じで受け止めてしまっています。
でも、確定拠出年金制度でも勤続3年未満の事業主返還規定を作ることを認めていますので、退職金の勤続年数制限は社会の慣行として認知されているのかもしれません。
少々すっきりしませんが・・

労働保険の年度更新は7月11日までに申告を!

いきなりへんなタイトルで始まりましたが、実はこの数日間労働保険の年度更新手続きの窓口応援に労働基準監督署に行っていました。
事業主の労働保険年度更新の届けに来るのを受け付けるわけですが、これが実は意外と大変。
きちんと資料をそろえてしっかりと申告書を書いてくれていれば計算のチェックなどで簡単に終わってしまうのですが、けっこう多くの人が白紙、もしくはそれに近い状態で持ってこられます。
書いてないからしっかり書いてこい、と突き放すわけにもいきませんので、一緒に内容を確認しながらその場で申告書を完成させ、納付書を作成します。
慣れないとこれにすごく時間と手間を取られますし、間違えると大変なのでけっこう気を使います。

継続事業の場合はそれほど特殊なこともないし、申告書を給与実績に照らし合わせていけばそれほど難しい作業ではありません。しかし、一括有期事業の場合はそんな単純にはいきません。
「一括有期事業報告書」や「一括有期事業総括表」を作成する必要がありますし、何よりもこれらを作らないと申告書そのものが作成できません。
これはけっこうやっかいです。
実は私は継続事業の年度更新はやったことがあるのですが一括有期のほうは今回が初めてでした。
事前に自分で労基署の資料をチェックしたり、経験のある先生方にお願いして教えを請うたりしましたが、やはり実際にやってみないとわからないものです。
そして、本番を迎えたのですが・・・
やはり一括有期は曲者でした。
一括有期報告書には年度内に終了したすべての元受事業の名称や請負金額を記載しなければならないのですが、その事業の開始時期によって記載する請負金額が消費税込みであったり、消費税込みでも105分の108で再計算して、しかも2段書きにしないといけなかったり、さらには平成27年4月以降であれば消費税抜きの金額を記載するなどの特別な措置が必要になります。そのため、一括有期事業報告書を見て(さすがにほとんどの方がこれは作成しています)その金額が消費税込みなのかを確認します。
私が担当した方たちのほとんどがこの消費税の扱いを認識しておらず「えっ!」という声ばかりです。
こんな場合は仕方ないのでその場で一緒に数字の引き直しから始めます。当然時間かかりますし、金額が大きいので何度でも検算しておかないといけません。
そして何とかかんとか数字を固めたら今度は事業ごとに労務比率や保険料率を確認します。すると、これもけっこう間違っています。昨年も同じ作業しているはずなのですが、事業が多いと適用も増えてきてつい間違ったりします。すると、これも修正です。
こうやって何とか報告書をまとめると、今度はそれを総括表にまとめる必要があります。ですから、仮にこの総括表や申告書をきちんと作ってくれていても報告書の数字がちがっていれば、すべて修正しないといけません。要するにすべてやりなおしです。
申告者の方もその場で書き直しもしてもらったりもしますので大変です。とにかくこれ以外にもメリット制などけっこう落とし穴があり、やはり慣れが大切だと思いました。

実は一括有期事業の報告書や総括表に関してはExcelなどで有志の方が自動計算するようなシートを作って公開してくれていたりします。実際それで作成したものを持ってこられた方もおられましたが、すごくきれいにまとまっており、実に見やすかったです。
しかし、申告者の方の中にはパソコンが苦手だとか、何年もこれ(手書き)でやってるから、とか言われる方も多く、なかなかそういったソフトが浸透していないようです。これでは電子申請(e-Gov)も進まないはずだ、と感じました。

ところで、労働保険年度更新の報告者や申告書を税理士に作ってもらった、とか、全部税理士に任せてる、という方がたまーにおられます。
しかし、これって社労士法との兼ね合いで非常にグレーなことなのでおすすめはできません。
労働保険や社会保険手続き関連は社労士に依頼しましょう。

賞与の支給日在職要件に関して

賞与の支給に関して、その支給日に会社に在職していなければ賞与は支給しない、という「賞与支給の支給日在職要件」を定めている会社は多いと思います。
私が知る限りでも、この要件がない会社はみたことがありません。おそらく「支給日在職要件」というのは社会一般的な「常識」なのかもしれません。
事実私も何度か退職していますが、賞与に関してはもらえるとは思っていませんでした。
でも、この「支給日在職要件」というのは本当に「当たり前」のことなのでしょうか?
ちょっといろいろ調べてみました。

「賞与の支給要件」に関しては法律に特に規定があるわけではない(3か月を超えて支給されるものなので「賃金」ではありません)ので、賃金に関する規定から外れることになります。まずはこの認識が必要です。

となると判例がどのような判断をしているか、ですが、
基本的に裁判所は「支給日在職要件」を有効と認めています(大和銀行事件・最一小判57.10.7)。
また、自発的退職者だけでなく、定年退職や懲戒解雇、普通解雇、早期退職優遇制度適用といった自発的ではない退職事由の場合でもこの「支給日在職要件」は有効であると判断しています。
(カツデン事件・東京地判平8.10.29、三光純薬事件・東京地判平14.9.9、京都新聞社事件・最1小判昭60.11.28、日本テレコム事件東京地判平8.9.27、ヤマト科学事件・東京高判昭59.9.27、コープこうべ事件・神戸地判平15.2.12)
つまり裁判所としてはよほどのことがない限り、賞与の支給日在職要件に関しては容認している、といった感じです。

しかし、そんな裁判所でも整理解雇の場合は一転してこの「支給日在職要件」を認めていません。
退職事由が整理解雇であった場合は、
1.労働者に責任がなく、
2.退職時期の予測がつかず、
3.支給額が規定などによって額が固定もしくは具体化されていた場合に限って
「支給日在職要件」は民法90条の公序良俗違反により無効である、と判断しています。
(いうなれば、「加算退職金には未払い賞与も含む」などと一文を入れておけば問題ない、ということになりますね。)


学説では「支給日在職要件」は有効であるとしつつも、労働者自身が退職日を選択できない場合は賞与請求権が発生するという説が優勢ですので、裁判所と学説では考え方に大きな差があるようです。

ところで、自発的退職、解雇、早期退職、定年といろいろな退職事由で判例が出ているのですが、まだ「死亡」の場合の判例が出ていません。
死亡の場合も労働者の側で退職時期は決めることはできないので、学説から考えると賞与支払い請求権が発生することになります。
他方、裁判所の判断では発生しないことになります。

これはあくまでも私個人の考えですが、私は死亡の場合も「支給日在職要件」の規定がある場合はそれが有効であると考えます。
死亡原因が事故や事件である場合はその死亡にかかる当事者の責任がある場合もあるでしょうし、ない場合であっても、それに対して事業主に責任がないにも拘わらず、事業主にだけ「包括的合意」の表明である「規定」を無効にするという理屈が通りません。先にも書きましたが、賞与は「賃金」ではないため、雇用契約によって請求権が発生するものですから、その雇用契約(就業規則等も含む)でその支給要件が定められているのであれば、法はそれを尊重すべきであると考えます。
また、死亡原因が疾病である場合は、労働者自身の自己保険義務があることを考えれば、疾病により労働を提供できなくなった原因は労働者にあるわけで、その責めは労働者自身が負うべきであって、言い換えれば労働者側の債務不履行ともとらえられるため。事業主に対して規定を否定するほどの責任を負わせることは不合理であると考えます。

以上から見るに、とにかく社会一般的に「賞与の支給日在職要件」はよほどのことがない限り(整理解雇など)是認されていると考えてもいいのではないでしょうか。

ちなみに労働者の自己保険義務は意外と知られていないのですが、多くの法律で明文化されています。
私が思いつくだけで、
・労働契約法 第五条 (事業主の安全配慮義務を規定したものですが、労働者の順守義務も暗に規定したものです)
・労働安全衛生法 第二十六条
・労働安全衛生法 第六十六条第5項
・労働安全衛生法 第六十六条の七第2項
などがあります。
労働者は労働の対価として賃金を得るわけですから、健康で安全に仕事をする義務があるのは当然と言えます。

労働協約と労使協定

この6月から大阪労働大学で労働法の講義を受けているわけなんですが、もう忘れてしまっていたことが山ほど出てきて改めて法律の難しさと複雑さを思い知らされています。
講義は法律の基礎的な部分(これがすごく大事なんです)と判例を軸にして進んでいきますが、そんな講義の中で印象に残った部分をポチポチと紹介していきたいと思います。話しがあちこちに飛んだりするかもしれませんがご勘弁ください。

まずは、労働協約労使協定の話です。

労働協約と言うのは労働組合と会社との間で締結する書面協定です。
労働協約は労働組合法を基盤として結ばれます。そして、労働協約に定められた「労働条件その他の労働者の待遇に関する基準」に反する労働契約はその部分については無効となり、無効となった部分は労働協約の基準が摘要されます。これを「規範的効力」と言います(労働組合法16条)。
もう一つの重要な効果は「一般的拘束力」と言います(労働組合法17条18条)。
これには工場事業場単位のものと地域単位のものとがあります。
工場事業所単位というのは、一つの工場事業場において、「同種の」労働者の4分の3以上が一つの労働協約の適用を受けるに至った場合は、残りの4分の1の「同種の」労働者もその労働協約の適用を受けるということです。
一般的に労働協約はその労働組合の組合員のために結ばれるものですので、その効力が図らずも外部にまで及ぶ場合がある、ということです。
一方地域単位のものも似たような設定なのですが、職能別組合の発達していない日本では適用されることはまずありません。
で、実はこの「4分の3以上」っていうのがけっこう曲者で、何をもって「同一工場事業所」というのか、とか「同種の労働者」って誰、とかいったことで結構もめます。
労働者からすれば自分の知らないところで自分の就労条件が決められてしまう(いい方に変えられる場合が多いかもしれませんが)というのはいろいろと仕事への認識の上でズレが生じてしまいあまり好ましいことではありません。
それと仮に複数の労働組合が存在した場合はそれぞれで労働協約を結ぶと、4分の3以上組合が結んだ労働協約があったとしてもその効力はその少数組合には及ばない、ということで、結局複数の制度や約束事が同時に存在することになります。
労働組合はすべて平等であり、その大きさ(組合員数)は権利義務に影響しないということからみてもこういった配慮は当然かと思いますが、実務的にはこれが人事労務の複雑さを招くことが多々あります。
複数労組を有する企業の労務担当はこれでけっこう苦労したりします。

労働協約とよく似たものに労使協定というものがあります。
労使協定とは、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者と使用者との書面によって結ぶ協定のことですが、労働基準法ではこの「協定」に対していくつかの定めがあり、特別な効果を認めています。
また労働基準法以外にも育児・介護休業法や雇用保険法などの法律で「協定」の効力を認めているものも多くあります。
労使協定はいわゆる「法令違反に対する免罰効果」をもたらすもので、労働協約のように労働条件の最低条件を定めたりするものではありませんので根本的に性格が異なっています。
労務担当者は折に触れてこの労使協定の取り交わしや更新作業が業務となります。
いちばんよく知られているのは36条の時間外労働や休日労働に関する上限を定める協定で一般的には36協定と言われるものです。これは毎年結ばなければいけませんし、これがなければ残業や休日出勤をさせることができなくなる(いわゆる違法状態)ので事業主としては絶対に結んでおかなければなりません。そのため労働者代表としてはこの36協定が労使協議のかっこうのネタになります。
労使協定と労働協約の大きな違いのもう一つはその効力の及ぼす範囲です。
労使協定ではその事業所のすべての労働者にその効果が及びます。だから労働協約で「残業はさせない」と取り決めていたとしても、過半数労働者代表が36協定を結んでいれば、残業をさせたことが即違法になるわけではなく、労働協約違反での労使間の話合いにしかならない、ということになります。
けっこうこのあたり実務的にも面倒です。

ちなみに労働基準法で協定を求めているのは

18条 貯蓄金管理協定
20条 賃金控除協定
32条の2 最長1ヶ月単位変形労働時間制実施要件協定
32条の3 フレックスタイム制導入協定
32条の4 最長1年単位変形労働時間制導入協定
32条の5 1週間単位変形労働時間制導入協定
34条の2 休憩時間一斉付与除外協定
36条 時間外・休日労働協定
37条の3 割増賃金の割増率引上分に相当する有給代替休暇を付与する場合の協定
38条の2 事業場外労働についてみなし労働時間数に関する協定
38条の3 専門職型裁量労働制導入に関する協定
39条の4 年次有給休暇の分割付与に関する協定
39条の5 計画年休制度を導入するための労使協定
39条の7 年休日の賃金を標準報酬月額で支払うことに関する協定

今のところ以上かと思いますが、労務担当の皆さん、ちゃんとこれらの協定結んでいますか?
特に営業職のある事業所では38条の2の事業場外労働についてみなし労働時間数に関する協定が結ばれていないケースがすごく多いのでご注意くださいませ。
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