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労災補償保険と事業主とのかかわり その2

労災補償保険と事業主とのかかわりのその2です。
その1からちょっと(?)間空いてしまいました(^^ゞ

言い訳はさておいてさっさと本文に入りましょう。
前回では労災補償保険と事業主とのかかわりに関して、

労災保険料を全額払っているのは事業主であるのに労災認定のプロセスに事業主は直接関与することができない。

という話を書きました。
たしかに労災事故の事業主証明に事業主の意見書を付けることはできるけれども、それが労災認定にどれだけ影響力を持つかというとかなり疑問です。
これは被災労働者が労災による補償を請求することは労災保険法上の労働者の権利であって、労働者が自分の権利を行使することを事業主があーだ、こーだと口をはさむのはおかしいし、これを許してしまうと労災隠しにつながってしまいかねない、という考え方が根底にあります。
それに労災給付が給付されることで、その範囲で事業主は労災事故に関する責任が免責されるわけですから事業主にもメリットはある、とも言えます。

しかし、最近の(特にメンタル不調に関して)労災申請に関しては、その労災認定がなされることで、事業主の安全配慮義務違反による損害賠償請求がほぼ認められたも同じになり、

   労災認定 = 事業主の安全配慮義務違反(労災民事責任)の認定 = 損害賠償(高額化しています)

ということになってしまいますので、労災認定というものが事業主にとって相当大きなコストインパクトを持つものになってきている、ということは間違いありません。
しかし、前回の記事で紹介したように事業主はこの認定プロセスに関わることはできません。
なんとなーく納得感がないように感じている事業主さんも多いと思います。

では、この認定プロセスに事業主が関われないことに対して司法はどういう判断をしているのでしょうか?
実はこれまで、こういった労災行政手続きに事業主が関与するということはほとんど議論もされてきていません。
しかし、ちょっと違った角度で労災行政手続きと事業主の関与が議論されることになりました。
それは、労災給付申請が認められないとする決定に対する不服申請が行政訴訟まで発展したことにより始めて司法の考え方が示されたことです。

労災保険法上、請求した労働者が労災申請に関する不支給の決定に関する不服がある場合は、

労働保険審査官への審査請求 → 労働保険審査会への審査請求

という2段階の審査請求を経て初めて、処分を決定した労働基準監督署長を被告として裁判を起こすことができます(労災行訴)。
通常裁判ではその利害関係者が協力して裁判にあたるのが普通です。
労災行訴の場合その処分を決定した労働基準監督署長を被告として決定を受けた労働者(もしくは遺族)が原告となってその決定の取り消しを求める裁判が行われます。すると、行政手続きある不服審査請求のプロセスでは関与を認められなかった事業主も利害関係人として何らかの形で裁判に関わることができるのではないか、という議論が起こります。
これまで書いてきたように、労災に認定されることで事業主は民事上の責任を負うリスクがかなり高まりますし、労災給付への上積みなどの事実上の労災支出が行われます。
であれば、事業主も利害関係人となって裁判に関わることができるのではないか、という考えもあながち無理な考えではないと思えます。

実際には事業主が被告たる労働基準監督署長と同列になるということはあり得ませんが、当該署長の補助者としての参加を認めるべきではないか、という議論が起こっていました。

そしてその議論に決着をつけたといえるのがレンゴー事件(最一小判決 平成13年2月22日)です。
ここで事件の詳細を書くのは避けますが、判決文は公開されているので興味がある方は検索してみてください。

この判決において最高裁は「一定の要件」があるならば事業主も補助者として訴訟に参加できる、としています。
これは裁判の結果が何らかの利害が及ぶことが明らかな場合はその裁判に参加することができるという近代裁判法の法理に従ったものかと思われます。
民事裁判ではその原告適格とかで、そもそもその裁判に関わることが妥当なのかどうかを争っているのをよく見ますが、それと似た感じかな、とも思えます(厳密にいえば違うのかもしれませんが・・)
とにかく、このレンゴー事件の判決において最高裁が示した判断とは、

1.労災認定とその後の民事上の賠償責任は別の話だから労災認定の可否を争っている時点ではこれは関係ない話だから、労災認定が労災民事責任を導く要因になるろいうことを「利害関係」の要因にはできない。
2.その事業所がメリット制適の用事業所ある場合は労災と認定されることで労災保険料が上がってしまう。この点は明確な不利益であるので、この点においては利害関係が認められる

としています。
すなわち先ほどの「一定の要件」とは「メリット制の適用を受ける規模の事業所」であることということになります。
労働保険徴収法のメリット制とは思い切り簡単な言い方をすれば、労災が多く起こる事業所の労災保険料を高くし、逆に労災が少ない事業所は保険料を安くするという制度です。
ですから、このメリット制が適用される事業所では労災に認定されるかどうかが、労災保険料の変動につながってくるわけです
ですから、最高裁はこの点においては利害を認めるが、労災認定されたから民事上の損害賠償を請求されるなんてことまでは利害とは認めない、といっているわけです。

まぁ、こういわれてしまえばしかたないのかなぁ、なんて思ったりもしますが、メリット制を受けるためにはそれなりの事業規模が必要なわけで、それに該当しない事業所、特に中小企業などは労災行訴には参加できない、というのはちょっとどうなのかなぁなんて考えたりもします。

結局事業主としては多少コストをかけてでも自社の安全衛生管理を徹底させて労災が起こらないようにすることが一番安上りであるということになりますし、貴重な資源である「人材」を確保する上でも必須事項であるということです。
なによりも誰も幸せにならない労災が起こらないことが一番の幸せなのではないでしょうか。

労災補償保険と事業主とのかかわり その1

ここ数年、労働災害の問題が大きく扱われるようになってきました。
特にメンタルヘルスに絡む「こころの病」の労災認定基準が大きく改められるなどして企業の安全配慮義務がどんどん拡大していき、事業主の責任は重くなるばかりです。
もっとも、労働災害が起こらないようにすることは事業主としては当然の義務であり、責任でもあります。
従って、責任が重くなった、というよりは責任が社会一般に認識されてきた、という方が正解かもしれません。
ここのところ、ちょっと労災からみの相談を受けたりしましたので、労災補償保険と事業主とのかかわりにかんして2回に分けて考えてみたいと思います。

なお、安全配慮義務に関する私の意見は当ブログの「災害と企業の安全配慮義務と危険予測」に簡単に記してありますのでよろしければ参照してみてください。

労働災害にかかる公的な保険制度として労働災害補償保険法があるわけで、すべての労働者はこの保険に加入しなければならず、その保険料は事業主が全額負担します。
この労災保険は被保険者である労働者個人に何か証書とかが発行されたり通知されたりするものではないし、保険料負担もないため、労働者本人には加入しているという意識が薄く、実際労災で処理されるべきものを健康保険で賄ったり、通勤災害を申請しなかったりしているケースが多々見られます。
またよく
「自分が労災に入っているかどうかわからない」
という言葉もよく耳にしますが、強制加入なので入っているのが当たり前なので入っていない方がおかしい、ということです。

事業主としては強制的に労災保険料を支払わされて(意識の問題です)いるのだから、せめて保険給付の分だけでも自分の責任を免れたい、と考えるのは自然ですし、事実保険給付の部分についての事業主の免責は法律にも明記されているところです。
しかし、その免責部分にしても実際に労災保険から支給された部分についてのみ、という制限がありますし、支給決定された部分すべてが免責対象になるわけではないことは当ブログでも以前書きました。

労災保険給付と損害賠償責任の関係の話

いずれにしろ労働災害にかかる事業主の安全配慮義務違反による損害賠償は増加の一歩をたどっており、場合によっては億を超えることも珍しくなくなってきました。
企業としてはそのリスク対策にも頭が痛いところではないでしょうか。

ここで問題となるのが、

労災認定がその後の損害賠償請求に大きな影響がある

ということです。
特にメンタル不調による安全配慮義務違反による損害賠償請求では、そのメンタル不調が労災認定されてしまうと、ほぼ自動的に損害賠償も認められてしまうというのが通例となっています。
少なくとも労災認定される以上、そこに事業者の安全配慮義務に瑕疵があったと認定されたということなのですから、監督署がお墨付きを与えた、といっても過言ではないでしょう。
現に私がかかわった労災問題でも、労災認定された時点でアウト、という意識がすごくありましたし、訴える方としても労災認定の結果を待ってから損害賠償請求をしてくる、という流れになってきているように感じます。

そんな企業の訴訟リスクに重大な影響を及ぼす「労災認定」ですが、実はこの「労災認定」のプロセスに事業主が関与することはまったくと言っていいほどできません。

労災保険の給付請求は被災労働者本人もしくはその遺族であり、それを認定するのは行政であるので、会社はそこに一切かかわることはできません。
それどころか、会社にはその労災給付請求に関して「協力する」義務があり、それを拒んだりすると最悪「労災隠し」と認定されてしまいます。
すなわちゲスな言い方をすると、
事業主には保険料という金だけ払って責任だけがついてくる
ということになります。

「会社が労災の申請をしてくれない」
という話をよく聞きます。
しかし、労災保険の給付請求をするのは被災労働者もしくはその被労災遺族なので、会社が行うものではありません。
自分で所轄の労働基準監督署に行って労災給付の認定の申請すれば、書式が揃っていれば受け付けてくれます。
この時に給付請求書に事業主が署名(事業主証明)して提出するのですが、その署名を会社が拒否したと言った場合は「会社が事業主証明をしてくれないため」とかいった理由書(書式フリー)を添付して出せばオーケーです。
(従業員に会社の同意が必要だと説明している会社が実際にありました。もちろん誤りです。)
事業主の証明があろうとなかろうと監督署は請求を受け付けた以上調査にはいりますので、ここで協力を拒否したり、妨害行為をしたり、資料を秘匿改ざんなどすると、法律によって処罰されることもありますので注意が必要です(労働安全衛生法第100条、第120条第5号)。

注意しなければいけないことは、労災給付請求=労災認定 ではない、ということです。
請求があって調査が入り審査が行われて労災認定されて労災の給付が支給決定されます。
その審査・認定を行うのは監督署です。会社でもなければ労働者でもありません。
だから、労働者が労災給付の請求をしたからと言って即労災認定ということではありません。
労働者の方でも「今労災の申請してますからもうすぐ認定されると思います」なんてことをさらっとおっしゃる方もおられます。
しかし、何度も言いますが、労災認定をするのはお国です。
企業としてもここで妙な抵抗をしても余計な腹を探られるだけでいいことはありません。
会社としては労働者が労災給付の申請をしたいと言ってきたら、状況を確認して協力するべきですし、何よりも業務起因性が少しでも疑われるのであれば本人が何も言わなくとも会社が積極的に対応していく体制を作っておいてしかるべきです。
それが安全配慮義務にかかるリスクマネジメントになります。

でもでもでも、そうは言っても今回は労働者が労災だと主張しているのはどうしても納得がいかない!
という場合もあろうかと思います。
本来であれば、そういう場合でも「お国の決定」を待って対応する、というのが常道なのですが、
本当に労災でないと思うのであれば、逆にその判定を監督署にゆだねて労災でないと決定してもらう方が労働者に対しても説明ができます。別に監督署はなんでもかんでも労災認定するわけではありませんので。きちんと審査したうえで正当に判断を下しているはずです。そこを信頼しなければ行政すべてが信頼できないということになってしまいます。

しかし、それでもどうしても納得がいかない!
という場合は「意見の申出」をするという手があります。
どういうことかというと、
1.事業主証明を拒否した場合にその理由を書面にて添付し労働者経由で監督署に提出する
2.事業主証明をすることはするが、それに但し書き所を添付し労働者経由で監督署に提出する

という2つです。
私は以前勤めていた会社で2の意見書(但し書)を出したことがあります。
簡単に言うと、
労働者が労災だと言っているが会社としては自傷事故であり、業務起因性はない、しかし、会社として調査には全面的に協力は惜しまないので厳密に調査をお願いしたい、
といったような内容をしたためて提出しました。
まぁ、これを出したからと言って決定に影響があるとは思えないのですが、調査員の方からはそういう意見書が出ているということで、こちらの主張を聴くという対応はしていただけたかな、と感じました。ただ、知り合いの監督官に聞いてみると、それで認定が変わるということは絶対にない、ということでしたので、あくまでも「気休め」なのかな、とは思いました。
ただ、嫌がらせのような労災給付請求をしようとする労働者もいたりするので、その場合はその労働者への何らかのプレッシャーにはなるかもしれません。

労災給付請求は労災保険の被保険者である労働者の当然の権利であるので、これを会社がどうこう言うことはできません。
請求が出されるのを「止める」という選択肢はありませんし、その選択肢は違法行為になります。
真実をしっかりと見極める行政の眼を信頼してその判断を待つ、というのが一番いいのはないかと思います。

長くなりましたが、次回は「決定された労災認定への不服申立」について事業主のかかわりを考えていきたいと思います。

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詳しくは下記ホームページで!
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「吾唯知足」

東京から引き揚げてきたときの荷物がまだ完全に整理がついていません。
もう3年にもなるのに開けてもいない段ボールが2つほど残っていました。
会社で使っていた個人的な資料や書籍がほとんどかと思うのですが、中には特に使うこともないけれど捨てるに捨てられないモノなんかも入っていたりします。
先日そのうちの一つを開けてみました。安全衛生関連で見直したい資料を探すためです。
探していた資料はすぐに見つかったのですが、紙ばかりの段ボールの隅に小さなスタンプを見つけました。
それがこれ、

waretada.jpg


「吾唯知足」のスタンプです。
だいぶ前に銀座の伊東屋で見つけて衝動買いしたものです。
「われ、ただ、たるをしる」
と読みます。
中央の「口」をそれぞれの漢字の一部が共有するデザインです。
もともとは釈尊が説いたことばだったようで「知足」が「たるをしる」と読んで、「足ることを知る人は心がおだやかである」といった意味のようです。
私は「自分の分を守って生きろ」という意味でとらえています。

大学時代に京都の龍安寺に行った折にそこにある「知足の蹲踞(つくばい)」を観たのが私がこの言葉に触れた最初です。
当時はあまりその意味もピンとはこなかったのですが、なんとなく心に引っかかっていましたし、なによりそのデザインに惹かれるものもあったので私のお気に入りのフレーズになりました。
伊東屋でそのスタンプを見つけた時は思わず飛びついた、という感じです。
その後はそのスタンプを名刺に押してみたり、手紙の最後に押してみたりと、けっこう使っていたのですが、いつの間にか紛失してしまってそれっきりになってしまっていました。
このスタンプって意外と小さいし、台の部分が透明なクリスタルなので、床に落としたりするとわからなくなってしまうんですね。
まぁ、家のどこかにあるだろうと思ってそのままずっと来ていたのですが引っ越しのあわただしさに書類に紛れて押し込んでしまったようです。
よく廃棄する書類の方に紛れなかったものです。

久しぶりで再会(?)した「吾唯知足」のスタンプですが、実は数日前にこの「吾唯知足」を思わぬところで見ていました。
NHKのドラマで多部未華子さん主演の「ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語 ~」というドラマがあるのですが、その第3話にこの「吾唯知足」が登場します。
それを観ながら、ああそういえば自分もこのスタンプ使ってたなぁ、なんて考えていたのですが、それが数日して自分の荷物から転がり出てきたわけで、何か妙な因縁を感じてしまいました。
また一方でドラマでは「吾唯知足」のスタンプが封書の封緘に使われているのですが、ああ、こういう使い方もあったのか、と思い新たな気分にもなりました。

せっかく何かの縁があって再び手に戻ってきた「吾唯知足」のスタンプです。
これからもこの言葉の意味をかみしめながら大切に使っていきたいと思います。



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上司部下間のコミュニケーションアップに

ゴールデンウィークが終わりました。
人によっては29日から昨日までの9連休だったかと思います。
私はというと、先月の中旬あたりからプライベートの用事がたてこんだせいもあってほとんど仕事らしい仕事はしていませんでした。
だから言ってみれば、ながーーーーーいゴールデンウィークみたいなものでした。
本当の(?)ゴールデンウィークに入っても子供たちが帰ってきたり、普段会えない友人たちとあったりして、それなりに忙しい毎日でした。
そんなそれなりに忙しい4月から5月にかけてでしたが、移動の時間や待ち時間などもけっこうあったので思ったより本を読むことができました。
もっとも、今回はほとんどが推理小説と時代小説でしたが(^-^;

今回はそんな中で気になった本のうち2冊を紹介します。

oneonone.jpg


本間 浩輔氏の「ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法」

中原 淳氏の「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」

です。
本間氏の「ヤフーの1on1・・」は著者が勤務するヤフーの社内で制度として始めた「1on1ミーティング」についてかかれた本です。
社員間、特に上司部下間のコミュニケーションの壁にぶつかった著者がそれを打開するために始めた1on1ミーティングについて、その導入から運用までのガイドブックといった感じの本です。
今会社では上下間のコミュニケーションの劣化がかなり問題となっています。
「管理職の多様化」と「管理職の役割の変化」がそれの大きな原因です。
特に「管理職の多様化」は「昭和の日本企業」のカルチャーを引き継いでいる会社などではかなりおおきなインパクトとなります。

1.女性管理職の増加
2.転職などによる「知らない」上司の増加
3.上司の若年化による、部下上司の年齢の逆転現象と「管理職」の経験不足と教育不足
4.グローバル化による外国人管理職の増加

等々

さらに上司の「事なかれ主義」の蔓延も気になるところです。
嫌われたくないとか、もめ事を避けたいといったことのために、よほど大きな問題でなければ上司が部下に注意しない、ということが多いように思えます。
また、「いい上司」を「聞き分けのいい上司」と勘違いして部下におもねる上司もいます。
こういった上司部下間のコミュニケーションのゆがみを是正するには「会話する」しかありませんし、何よりも一番手っ取り早い方法でもあります。
現にこの「1on1ミーティング」のようなものは他の会社でも行われていますし、「できる上司」は自然と会話を実践しています。
でも「言うわ安く、やるは難し」です。
実際に面談してみて何をしゃべったらいいのかわからない、とか、忙しいのに時間が取れないとか、やってみるとこれがけっこう大変です。
本間氏のすごいところは、とんでもなく忙しい社内において「定期的」に「強制的」に実施するためにプロセスを確立させて「制度化」したことと、「この時間は部下のための時間である」といったごく基本的な事を社員にしっかりと説明したことです。
著書ではさらっと書かれていますが、実際には相当なご苦労があったものと推測されます。

ただ、言わせてもらうならば、ヤフーという企業のカルチャーがこういった「1on1ミーティング」なるものを受け入れる素地があったことが成功の大きな要因であったと思います。
この成果が他の会社でも通用するか、といわれたならば、私は「難しい」と考えます。
もちろん、現在では多くの会社がこの「1on1」を導入して成果を上げているのは事実ですが、そのほとんどが大企業であって、中小企業ではきちんとカスタマイズしないと運用すること自体が難しいと考えます。よほど強力な指示機能がないと導入してもすぐに形骸化してしまいますし、「1on1」をやるために何かをするといった逆転現象が起こってしまいます。

この本はガイドブックとしては素晴らしいと思いますし、大変参考になるところも多いかと思います。
ただ、「ヤフーだから成功している」という観点も頭において読むべきかなと思います。

もう1冊の中原 淳氏の「フィードバック入門・・・」ですが、実はこれは私にとっては再読です。今年の2月に出版されているのですが、その時に購入して一気読みしたものです。
今回本間氏の本を読んでいると、この「フィードバック入門」に触れられているところも多く、この2冊を抱き合わせで読んだ方がいいと思い、本箱をあさって再読してみました。
前回はけっこうざっくり読みでしたが、今回は本間氏の本のこともあるのでしっかりと読み込んでみました。

先にも書いたように今の世の中「管理職」の在り方が変わってきています。そのため過去の管理職養成メソッドは通用しなくなってしまっています(それに気が付いてない会社も多いようですが・・)。
そんな時代の「悩める管理職」のために書かれたというのがこの本になります。
中原氏は管理職の仕事は「部下の能力を引き出して組織の成果に貢献させる」ということであり、そのためには「フィードっバック」こそが最大の武器である(少し書き方は違っていますが、私はこうとらえました)、しています。
そして
フィードバックとは、「成果のあがらない部下に、耳の痛いことを伝えて仕事を立て直す」部下指導の技術としています。
しかし、この「フィードバック」というのがとにかく難しいです。
当たり前です「嫌なこと」を喜んで聴く人間はめったにいません。「嫌がられる」ことを承知で指摘しなければいけないわけですから指摘する方も根性がいります。しかし、それでもあえて行わなければいけないことが「フィードバック」であり、それをやることの意味と意義、そして実際の方法論まで踏み込んで書かれた本です。
そしてその「フィードバック」というのは部下と上司の「対話」にほかなりません。ここで先の本間氏の主張する「1on1」がリンクしてきます。
最初に単体で読んだ時よりも本間氏の「ヤフーの1on1・・」に続けて読んだ方がお互いに補完しあって自分なりにイメージすることがしやすくなりました。
そういう意味でもこの2冊を抱き合わせで読むことを私はお勧めします。
なお、「フィードバック入門」では先に書いたような現在の「管理職」の問題点などもかなり詳細に語られていて、それを読むだけでも面白いな、と感じました。
ただ、「フィードバック」というのは本来「当たり前」のことであり、成長のツールであることは以前からみんな理解していることですし、多くが無意識でおこなわれてきていることです。
また、中原氏の「フィードバック」の定義を「成果の上がらない」と「耳の痛いこと」に絞ってしまっている点にも疑問が残ります。
「成果が上がりすぎている」部下にもそれを指摘することが必要な場合もありますし、「励ましの言葉」を伝えてモチベーションアップを図ることもフィードバックの役割だと考えます。
「ジョハリの窓」でも自己理解の増進のためには「他人の知らない自分」を「フィードバック」してもらうことが重要であると説かれています。
「フィードバック」をあえてそこまで絞ることで管理職の役割を明確化させようという意図もあるのかもしれませんが、「耳さわりの良い」フィードバックもあってしかるべきではないか、というのが私の考えです。

ただ、そうはいってもこの2冊は現在管理職である方や、管理職を目指す方には非常に参考になる本であると思います。
興味ある方はぜひ書店で見かけたら手にとって目を通してみてください。








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プロフィール

気まぐれ社労士 

Author:気まぐれ社労士 
企業では安全配慮義務や労務管理、人事制度・諸規定など課題はたくさんありますが、今の企業では「疲れ」への対策がすごく重要です。少しでも人事関連で疑問やお困りのことがあればご連絡ください。きっと解決策が見つかります!





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