FC2ブログ

民法改正と労働基準法の関係(特に時効の問題)

2017年(平成29年)5月26日、民法改正案(民法の一部を改正する法律案)が参議院で可決、成立しました。どうも施行は2020年頃となっていますが、まだはっきりとしていません。
労働基準法の規定の多くは民法の規定の特別法ですから、当然労働基準法もなんらかの影響を受けることになりますし、労働問題であっても民法の規定に従う場合も多いです。
今回の民法改正は債権の部分にかかるものが主になっていますが、そのなかでも我々が特に影響を受けるのは「消滅時効の期間の起算とその長さの改定」であると思います。

現行民法では、債権の消滅時効の原則的な時効期間を、
「権利を行使することができる時」(客観的起算点)から10年と定め(現行民法166条、167条)、
その上で商行為によって生じた債権については5年間(商法522条)とし、
その他職業別に短期間の時効期間を別途定めています(現行民法170条~174条)。


これが10年が長いとか短いとか、いくつも時効期間があるのはいかがなものか、といった議論は以前からあって、今回の改正でそれらが盛り込まれることになったわけです。

改正民法第166条(債権等の消滅時効)
1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
 二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前2項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。


つまり、改正法では、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、
または、権利を行使することができる時から10年間行使しないときのいずれか早く到達するときに時効によって消滅すると改められることになりました。
これに伴い、現行民法170条以下で定められていた取引別に定められていた短期消滅時効、商法522条に定められていた商事消滅時効が廃止されることとなり、消滅時効制度の時効期間と起算点の原則的な考え方が統一されることになりました。
つまり民法改正に合わせて商法も一部改正となったわけです。

しかし、労働基準法では賃金債権の消滅時効を2年と定めているなど、特別法らしく、個別の消滅時効規定が定められています。
商法の商事債権の消滅時効は民法改正に合わせて改定されましたが、労働関連法令に関しては触れられていませんでした。
しかし、昨今の労働者保護の観点や、労働債権だけを特別扱いすることへの疑問もあって、

どうやら2020年の労働基準法改正項目の1つとして盛り込まれる公算が高くなってきました。

影響をうけそうなものをざっと上げてみると、
労働基準法第115条関連で、

①賃金請求権
昨今では未払い賃金の請求でよく扱われる項目です。そもそも賃金債権とはいっても月給や日給といった短い期間で支払われる給与の場合は民法の短期消滅時効の1年が適用されるべきものですが、それを「特別法」として2年に延長していたわけです。
その大元の規定が1年から5年に改訂されたのですから、あえてこの規定を労基法に置いておく必要はなくなることになります。
労基法改正の場合は労基法115条がなくなるのか、もしくは5年という期間を明示するのかは不明です。

②退職手当請求権
これも賃金請求権と同じ考え方ですが、もともと労基法115条では5年が明記されていますので、規定の文言はともかくとして実務的にはあまり影響はないと思われます。

③災害補償請求権
災害補償請求権も2年と規定されているのでこれも5年に延長されるべきなのでしょうが、現行の労災保険法では障害(補償)給付、遺族(補償)給付は5年間と定められています(労災保険法第42条 公務災害法も同じ)。となると労災保険法も改正になるのでしょうか。

その他考えられるのは、

④年次有給休暇
現行では労基法第39条の有給休暇の規定は同115条の適用を受けるとされています(昭2212.15基発501号及び国際協力事業団事件・東京地判平9.12.1)。115条の適用を受けるのであれば、この年次有給休暇規定も影響を受けるはずです。となると有給休暇は5年間残ることになり、消化しないと結構な日数が積みあがってしまいます。企業にとってかなり大きな債務となり財務インパクトがすごいことになると予想されます。

⑤会社への債権
帰郷旅費(労基法第15条3項、第64条)、金品の返還(同法第23条)、休業手当(同法第26条)等の請求権も115条の適用を受けると考えられていますので、115条が改定になれば当然これらの請求権も影響を受けることになります。

うーん、ここまで書いて考えました。
やっぱ115条を削除してしまうのはまずいかも・・

⑥解雇予告手当請求権
そもそも解雇横手当を請求する権利はあるのか、という疑問もわきます。解雇予告手当は解雇30日前通達の融通性と考えられているわけで、解雇予告手当を支払わなければ解雇日が30日ずれるだけで、賃金未払いの問題ではないのかなと私は考えます。
ただこの解雇予告手当が労働者の利益になると考えれば、労働者側に請求権が生じるでしょうし、解雇日が伸びることが労働者の利益にならないことも考えられます。また、一度会社側が「解雇予告手当を支払います」と言っていて支払わないのであれば債務不履行の問題になります。
どちらにしても現行では115条の影響を受けて2年の消滅時効が存在すると考える方がわかりやすいのかもしれません。
ただ、労働基準法の強制法規としての面から、労働基準法違反による公訴、と考えると公訴時効の3年というのもありかもしれません。
どちらにしろ、この請求権も5年になることは可能性高そうです。

⑦付加金
労基法114条の付加金の規定には労働者の請求により裁判所が事業主に付加金の支払いを命ずることができるとあります。ただしここでこの請求は2年以内に行わなければならないとあるのですが・・この2年というのは排斥期間であって消滅時効期間ではありませんので、この規定の「2年」は今回の民法改正の影響をただちに受けるものではないといえます(「排斥期間」は時効のように停止措置や援用が出来ません)。
ただ、裁判所の判決が確定しているのに支払わない場合は別の不履行問題になります。

⑧退職時証明
労基法22条の退職時の証明請求権も、請求権の時効は退職時から2年とされています(平11.3.31基発169)ので影響を受けます。

⑨物品の返還
労働者の所有物品の返還請求権は、民法の規定によりので民法改正の影響を受けることになります。

あと気になるのが安全配慮義務違反による債務不履行および不法行為の問題です。
ざっくりいうと、現行では債務不履行が10年、不法行為が20年となっていますが、
改正法では、

不法行為
 原則、損害及び加害者を知った時から3年、または不法行為のときから20年(変更なし)
  + 生命・身体の侵害の特例 損害及び加害者を知った時から5年、または不法行為のときから20年

債務不履行
 原則 権利の行使ができると知った時から5年、または権利を行使できるときから10年
  + 生命・身体の侵害の特例 権利の行使ができると知った時から5年、または権利を行使できるときから20年

となります。
安全配慮義務違反で損害賠償を請求するときに「不法行為」でも「債務不履行」でも消滅時効の期間は同一となることになります。

とにかく民法改正の影響は予想以上に労働法に影響を与えそうです。
今後の改正の動きが見逃せません。

うーん、久々で長いのを書くと疲れます。
=======================================================================
御社の「人」のお悩み解決します。
人事制度・労使問題・メンタルヘルス・安全衛生対応
社会保険労務士事務所 岡本労務管理事務所

特定社会保険労務士・産業カウンセラー・国家資格キャリアコンサルタント・RSTトレーナー・心理相談員
岡本 寛明

詳しくは下記ホームページで!
HP http://www.mercury.sannet.ne.jp/occam/

外部人事ビジネスパートナーはいかが?

今当事務所では外部面談サービスというサービスの提供を行っていますが、今度これをさらに発展させた「外部人事ビジネスパートナー」というサービスを展開することになりました。
応用行動分析学をベースにした従業員のエンゲージメント向上と自律・自立を目指すものです。
そのPR動画をいくつか作ってみましたので公開します。
ご興味ある方はぜひお声掛けくださいませ。



=======================================================================
御社の「人」のお悩み解決します。
人事制度・労使問題・メンタルヘルス・安全衛生対応
社会保険労務士事務所 岡本労務管理事務所

特定社会保険労務士・産業カウンセラー・国家資格キャリアコンサルタント・RSTトレーナー・心理相談員
岡本 寛明

詳しくは下記ホームページで!
HP http://www.mercury.sannet.ne.jp/occam/

プロフィール

気まぐれ社労士 

Author:気まぐれ社労士 
企業では安全配慮義務や労務管理、人事制度・諸規定など課題はたくさんありますが、今の企業では「疲れ」への対策がすごく重要です。少しでも人事関連で疑問やお困りのことがあればご連絡ください。きっと解決策が見つかります!





最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

かうんたー
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR